信託Q&A

信託財産を受託者の固有財産とする旨の登記の可否について

家族信託(民事信託)において、受益者の死亡によって信託を終了させ、帰属権利者を受託者にしていた場合の登記手続きについては以前から法務局によって異なる取り扱いがされており、現場では少し混乱が起きておりました。

つまり、「受託者=帰属権利者」のケースにおいて、受益者死亡による信託終了登記の際の申請者は誰になるか(相続人の関与が必要か)、所有権移転登記で行うのか、固有財産となった変更登記で行うのか、登録免許税は軽減措置(0.4%)が適用されるのかなどの議論がなされてきました。

しかし、この度、法務省から通達(令和6年1月10日法務省民二第17号)が出されましたので、この問題に一定の終止符が打たれた形となります。

【事例】
信託財産は不動産のみであり、以下のとおり、登記名義人を受託者Bとする所有権の登記がされている。
委託者 A
受託者 B(BはAの相続人の一人である。)
受益者 A

※信託目録には次の記録がある。
① 委託者Aが死亡した場合には、信託が終了する。
② 委託者の死亡により信託が終了した場合の清算受託者及び残余財産帰属権利者は、信託終了時点における受託者とし、その者に給付引渡すものとする。

 

上記事例でAが死亡し、信託が終了した場合、帰属権利者である受託者Bが不動産を取得するわけですが、その際の登記の流れは次のとおり2段階となります(2段階の登記を必要とすることについては個人的には否定的ではありますが。)。

 

① 受益者変更登記(A→B)
 
受益者をAからBにする変更登記を、Bが作成した登記原因証明情報でBが単独で申請をします(不動産登記法第103条1項)。
 
※不動産登記法第104条の2第2項の登記義務者である「受益者」についての解釈に問題(相続人が受益者として関与する必要があるのではないか)があり、それをクリアにするためにBを受益者とする変更登記を経る必要がある。
 
 
② 受託者の固有財産となった旨の登記及び信託登記抹消
 
受託者兼帰属権利者であるBが受託者の固有財産となった旨及び信託抹消登記を単独で申請します。
この時の登録免許税は、登録免許税法第7条第2項の要件を満たせば1000分の4となります。

なお、登記原因が「信託財産引継」になるかどうかの明示はされていない点、及び登記識別情報が発行されるのかという問題(変更登記なので発行されないかと考えられますが。)もありますので、これらの点については法務局に事前照会をするのが確実だと思います。