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信託Q&A

信託契約公正証書は代理人が公証役場に出席して締結できる?

結論としては、可能であるが避けたほうがいいでしょう。
また、公証役場によっては代理人による作成を認めないこともあると思います。

 

民事信託(家族信託)は、その多くが信託契約を締結する方法で進めるケースがほとんどです。(ほかに遺言信託や自己信託がありますが、実務では件数は少ないです。)

委託者と受託者が契約を締結するわけですが、当該信託契約書を私文書で作成するのか、公正証書で作成するのか、2つの方法があります。
どちらの方法で作成するかは、ケースに応じて柔軟に対応すればいいかと思いますが、可能であれば公正証書で作成することがベターです。

【信託契約書を公正証書にする主なメリット】
 ① 公証人によるチェック機能
 ② 契約書の紛失や偽造・変造のリスク回避
 ③ 信託口口座の開設における条件クリア
 ④ 当事者間における心理的な紛争回避機能

 

さて、信託契約書を公正証書にする場合には、通常は公証役場に委託者と受託者が赴き、公証人立ち合いの下、署名押印をすることで作成します。

この時、相談者の方から「委託者が高齢で公証役場に行くのが大変だから、司法書士が代理人として出席して頂くことは可能ですか?」という質問をされることがありますが、冒頭の説明をするようにしています。

 

 

【メニュー】
 ① 公正証書遺言との比較
 ② 東京地裁例令和3年9月17日判決との関連
 ③ まとめ

 

公正証書遺言との比較

 

信託契約公正証書は代理人が作成してはいけない、という決まりはありません。

各種公正証書の多くは代理人でも作成可能なものです。
しかし、民事信託(家族信託)の多くは遺言代用信託と呼ばれるもので、遺言書と同じ機能を持たせた形で内容を決めます。

受益者連続型信託などと読んだりする受益者が死亡した場合に次の指定した受益者に受益権を承継させる形や、委託者兼受益者が死亡した時点で信託を終了させ、相続人に信託財産を承継させる形などを民事信託(家族信託)で実現することができます。

つまり、信託契約を利用した場合には、当該信託財産については遺言書の作成が不要になるということです。
誤解を恐れずに言えば、信託契約を作成することは、遺言書を作成することと同義ということです。

 

参考として「家族信託と遺言の違いは?」もご覧ください。

 

遺言書を公正証書として作成する場合(公正証書遺言と呼んだりします。)には、遺言者本人が公証役場に出席(もしくは公証人に自宅等に出張してもらう事も可能です。)し、本人が内容を確認した上で署名押印を行う必要があり、代理人として司法書士等の専門家が本人に代わって出席して作成することは認められていません。

そうなると、民事信託(家族信託)における信託契約が遺言と同じ機能を持つと考えた場合、やはり信託契約においても代理人が出席をして作成することは避けるべきという考えが自然な思考です。

中には、代理人が出席して作成した信託契約書は無効事由に該当するという見解を有する専門家もいらっしゃいます。
そういった意味でも、やはり代理人として公証役場に出席し、信託契約公正証書の締結を行うことは避けたほうがいいと思います。

なお、任意後見制度においても、任意後見契約公正証書を作成する際には、公証人が本人の判断能力の確認をしなければならず、代理人による作成は認められていないのが現状です。

東京地裁例令和3年9月17日判決との関連

 

民事信託(家族信託)を扱っている司法書士や弁護士の方々には周知の判決かと思いますが、信託契約を組成した司法書士に情報提供義務違反及びリスク説明義務違反の不法行為責任を認めた判決です。

この判決では、当該司法書士は委託者の代理人として公証役場に出席し信託契約公正証書を作成したこと、そしてそれが理由で信託口口座の開設を金融機関に断られた事実が明らかにされています。

つまり、信託契約公正証書を代理人が出席して作成した場合には、信託口口座の開設を断られるリスクがあるということです。

もちろん、その前提として代理人による作成を公証役場に拒否されることも十分に考えられますが、特に拒否されずに作成できてしまう公証役場も中にはあるかもしれませんので、注意が必要です。

まとめ
 

信託契約公正証書の作成は委託者及び受託者が出席して作成するべきです。

代理人を立てて司法書士が代わりに出席するなどの選択肢は取らない方が無難です。
もし、委託者がなんらかの理由で公証役場に行くことが難しいのであれば、公証人に自宅や介護施設、病院などに出張してもらう事も可能です。

せっかく費用と時間をかけて公正証書を作成するのですから、不備のない手続きで進めることが大事だと思います。