信託財産としての不動産が自宅不動産なのか賃貸不動産(収益物件)なのかによって、受託者がするべきことは異なります。
【信託財産に不動産がある場合の受託者の信託事務】
1 信託不動産が自宅不動産の場合
2 信託不動産が賃貸不動産(収益物件)の場合
3 まとめ
自宅不動産を信託財産として設定した場合、受託者の分別管理義務等の要請により、委託者から受託者への信託登記(所有権移転及び信託登記)を行う必要があります。
そして、当該建物に付されている各種保険契約(火災保険等)の契約者についても、委託者から受託者に変更する必要があります。
なお、当該変更をしなくても火災保険等は問題なく適用されるというケースもあったので、保険会社に確認することをおススメいたします。
上記のように委託者から受託者への名義変更をした場合、不動産の固定資産税の支払いや各種保険の保険料は、信託財産から支払うように設定します。
つきましては、不動産管理型信託の場合でも現金を信託財産に組み入れることがベターです。
収益物件である賃貸不動産(アパートやマンションなど)を信託財産に設定した場合は、上記自宅不動産の場合のような変更(信託登記や保険契約の変更)に加えて、家賃についての対応が必要になります。
信託財産となったアパートやマンションの家賃は、原則、信託財産の管理者として受託者が管理することになります。
賃貸不動産をオーナーが自主管理している場合には、当該オーナーから受託者に信託されるわけですが、受託者から各賃借人に対して「今後は受託者が管理する信託口口座に家賃を振り込んでください」という旨の振込先変更通知(お知らせ)をする必要が出てきます。
このお知らせを怠ってしまうと、従来通り委託者(オーナー)の銀行口座に家賃が入金されてしまうので、受託者の財産管理権限が及ばなくなってしまい、追加信託等で対応する必要が出てきてしまいます(実務上は資金移動のみで対応ができそうですが)。
一方、賃貸不動産の管理を管理会社に依頼している場合は、通常は家賃も管理会社の口座に入金されます。
その入金された家賃から、管理会社の取り分(手数料)を差し引いて、賃貸オーナーにお金が管理会社から振り込まれる仕組みになっています。
つきましては、当該賃貸不動産を信託財産に入れた場合には、受託者は当該管理会社に対して「今後は受託者が管理する信託口口座に家賃を振り込んでください」という旨の振込先変更通知(お知らせ)をする必要が出てきます。
〇=必要 ×=不要
受託者が行うべきこと | 信託財産 | |
自宅不動産 | 賃貸不動産 | |
信託登記 (委託者→受託者) | 〇 | 〇 |
各種保険契約の変更 (委託者→受託者) | 〇 | 〇 |
各賃借人への通知 (管理会社が管理している場合には管理会社への通知) | × |
〇
|
その他各種管理行為 | 〇 | 〇 |
固定資産税の支払い | 〇 | 〇 |
信託現金を管理するための信託口口座の開設 | 開設するのが望ましい | 開設するのが望ましい |
※ 信託口口座を開設する場合、信託契約書は公正証書にして作成するように金融機関から要請されることが通常です。
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