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信託Q&A

受託者を複数人選任することは可能ですか?

民事信託(家族信託)において、受託者は、信託の目的を達成するために信託財産を管理・処分する権限を有します。

多くの事例では受託者を1名にすることがほとんどですが、中には、親(委託者)から子供(受託者)へ信託をする場合、子供が2人いるから受託者を当該2人にしたいという相談者もいらっしゃいます。

たしかに、信託法上は受託者が複数名(以下、「共同受託」と言います。)になることも予定されています(下記条文参照)。
しかし、信託法上は共同受託が可能とされていますが、実務上利用されることはほとんどない印象です。

 

弊所に相談に来られる方でも、共同受託にしたいと希望される場合がありますが、その多くは「受託者になる候補者が複数いるから。」という理由のみで共同受託を希望されることが多く、一人だけを受託者として設定して、もう一人を第二受託者(後継受託者)として設定できること等を知らない場合がほとんどです。

実務上、共同受託が利用されない理由としては、主に次の点が挙げられるのではないでしょうか。

 

【共同受託が利用されない主な理由】
信託事務が停滞する可能性がある
信託口口座の開設が認められない場合がある
第二受託者(後継受託者)としての人員の確保
信託監督人、受益者代理人としての人員の確保

 

① 信託事務が停滞する可能性がある

 

共同受託の場合、信託事務処理の内容は原則として受託者の過半数によって決めることになります(信託法80条1項)。
複数いる受託者の意見が割れると、過半数の合意ができなくなり、信託事務がストップする危険性があります。

なお、保存行為を行う場合には各受託者が単独で決することができますし、信託行為に職務分掌の定めがある場合にも、各受託者が分掌している事務につき単独で決定し執行することができます(信託法80条2項、4項)。

また、信託行為において別段の定めをすることも認められています(信託法80条6項)。

 

② 信託口口座の開設が認められない場合がある

 

民事信託(家族信託)では、信託財産である現金を倒産隔離機能を有した口座(信託口口座)において管理することがベターとされています。

金融機関で当該信託口口座を開設しようとする場合、各金融機関によって条件があるのですが、ほとんどの場合「受託者は1人にしてください」と要求されます。

関連記事:信託財産である現金の管理方法(信託口口座の必要性)

 

③ 第二受託者(後継受託者)としての人員の確保

 

信託事務を行う中で、事故や病気によって受託者自身の死亡・判断能力の低下等が考えられます。
そうなると信託事務の停滞の危険性がありますし、また、受託者不在の期間が1年間続くと信託は強制終了することになります。

さらには、上記②とも関係するのですが、信託口口座開設に際して第二受託者を定めるように金融機関から要求されることもあります。

 

④ 信託監督人、受益者代理人としての人員の確保

 

民事信託(家族信託)では、信託事務を円滑に進めるため、また、受託者の監督やサポート、受益者の判断能力低下時の保護等のために、信託監督人や受益者代理人を設定することがあります。
この時、受託者を複数にするのではなく、1人を受託者、もう1人を信託監督人等に設定することも検討に値するかと思います。

 

 


信託法第80条(信託事務の処理の方法)
1 受託者が二人以上ある信託においては、信託事務の処理については、受託者の過半数をもって決する。
2 前項の規定にかかわらず、保存行為については、各受託者が単独で決することができる。
3 前二項の規定により信託事務の処理について決定がされた場合には、各受託者は、当該決定に基づいて信託事務を執行することができる。
4 前三項の規定にかかわらず、信託行為に受託者の職務の分掌に関する定めがある場合には、各受託者は、その定めに従い、信託事務の処理について決し、これを執行する。
5 前二項の規定による信託事務の処理についての決定に基づく信託財産のためにする行為については、各受託者は、他の受託者を代理する権限を有する。
6 前各項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
7 受託者が二人以上ある信託においては、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。ただし、受益者の意思表示については、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。