信託Q&A

追加信託とは?

民事信託(家族信託)では、信託がスタートした後に、信託財産に追加して財産を組み入れたいということがあります。

例えば、家族信託をスタートさせる段階では、現金100万円を信託財産として設定していたけれど、信託が始まってから追加で現金や不動産を追加で信託するような場合です。

これは「追加信託」と呼ばれることが多いですが法律用語ではありません。
また、この既存の信託に追加で財産を支出する追加信託に関しては、法的構成が明らかにされておらず()、実務上の概念として使用されています。

 

※「新たな信託設定と信託の併合」という学説や「信託の変更」という学説など。

 

通常の家族信託では追加信託をすることはそれほど多くはないかと思われますが、信託契約書には追加で信託ができるように追加信託の条項を定めておくことは珍しくありません。

なお、追加信託という抽象的な概念を利用して信託を組成してしまうことに否定的な見解もあり、追加信託の条項を安易に設けることは避けるべきという意見もあります。

 

追加信託の方法
 

委託者は、受託者の書面による同意を得て、 本信託の目的の達成のために、金銭を追加信託することができる。

信託契約書に定める追加信託の条項としては上記のような例が挙げられます。

追加信託は先ほど申し上げましたとおり、実務上の概念に過ぎないので、その成立要件を信託契約書でどのように定めるかがポイントになります。

原則として「委託者と受託者の合意」を追加信託の成立要件をとすることが通常です。

しかし、中には「委託者の一方的な行為」によって追加信託を可能にしている信託契約書もあるようです。

 

例えば、「委託者が受託者の口座に送金することで追加信託が成立したものとみなす」というような条項です。

このような場合には受託者の合意なく追加信託が可能になりますので、受託者の知らない内に信託財産が増加し、受託者の責任が重くなってしまう可能性があります。
また、信託事務遂行上、管理者である受託者の知らない間に信託財産が増えてしまうと、受託者が信託財産を適切に管理するができなくなります。

法的構成が明確になっていない追加信託だからこそ、その成立要件をしっかりと信託契約書に定めておくことが、後々のトラブルを回避することにも繋がりますので、「委託者と受託者の合意」を追加信託の成立要件にすることは最低限必要ではないかと思います。