家族信託(民事信託)において、受託者は信託目的を達成するために信託財産を管理・処分する重要な人物です。
信託法では、未成年者は受託者になれないと定められています。
つまり、未成年者以外であれば誰でもなれるということです。
成年被後見人でも破産者でも可能です(※)。
もちろん、その者が信託事務を行うに足りる能力を有するかどうかは別問題ですが。
※ 比較として、受託者である者が後見開始の審判、保佐開始の審判、破産手続き開始の決定などを受けた場合は、受託者としての任務は原則として終了することになります(信託法56条)。
家族信託において、実務上は家族や親族を受託者に選ぶことが多いです。
家族信託は、委託者の財産をその言葉のとおり「信じて託す」わけですから、何も知らない第三者に財産を託すことは通常考えられません。
また、受託者は信託事務を遂行するにあたり、多くの責任と義務を負います。
信託事務に基づく債務について受託者は無限責任を負います(信託財産限定責任負担債務を除く)し、分別管理義務や忠実義務、損失填補責任などを受託者は負っています。
受託者が任務を怠り、信託財産に損失や変更を及ぼすようなことがあれば、それ相応の責任を取ることになるのです。
そう考えると、確かに未成年者でなければ受託者に就任することは可能だけれども、受託者としてしっかりと信託事務を遂行することができる者の方が適任です。
我々のような専門職(司法書士や弁護士など)が受託者になることは信託業法との関係から避けるべきとされていますので、やはり適任としては家族(特に多いケースは親が自分の子供を受託者に選任する)や親族がいいかと思います。
もちろん、子供に財産を信じて託したとしても、その子供が受託者としての地位を利用して信託財産を好き勝手に使ってしまうことも考えられます。
そのような場合には、信託行為の中で受託者の権限に制限を加えたり、信託監督人や受益者代理人などの監督機関を設けることも検討に値します。
場合によっては、受託者の解任なども視野に入れる必要があるでしょう。
なお、もし、子供がいない場合や頼れる親族がいない場合には、商事信託の利用を検討することも1つです。
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